ドゥカティ、ポールスマートの試乗

 サスペンションの脱着無料キャンペーンで作業を行ったドゥカティのポールスマートを試乗しました。

 純正でオーリンズの前後サスペンションがついているので、調整代は十分にある便利な足回りです。この車両は中古で購入してからサスペンションセットは変更していなかったそうですが、いくつかの点で大きな問題があるように思えました。

 ドゥカティではよくある事ですが、雑誌等でフロント荷重が足りないと煽るため、リアの車高を上げたりフォークの突き出しを多く取ったりと、前下がりの姿勢を作ろうとする傾向が強くあります。これをすると旋回初期のダイレクト感はありますが、倒しこみの段階からリアが外に流れるようになり、非常に危険です。今回預かったポールスマートはリアの車高を上げて、そのような状態にありました。

 フロント荷重の不足を解消するには静的状態(スタティックバランス)ではなく、動的状態(活動状態またはダイナミックバランス)で前下がりを作り出すのが、当社としての回答です。そのためには前後ともに、なるべく動くようにセットする必要があります。試乗で感じたリアダンパーの硬さを解消するために、ダンパーのシムを数枚抜きました。スプリングレートの変更もすれば、さらに良い感触になりそうです。

 もう一つの問題点は、90°のV字二気筒をL字搭載している点です。これにより、エンジン全体が後退することでフロント荷重を稼ぎづらくなるとともに、同じホイールベースの他のエンジン形式と比較し、スウィングアームが短くなります。これはサスペンションストロークによる角度変化が大きいため、乗り味に大きく影響するようです。実際当社では996Sのスイングアームを20mm延長したところフロント荷重、ポジションなども同時に改善しました。ホイールベース延長に伴い、旋回は落ちますが程よい安定感を得られ、好印象でした。

 写真のポールスマートは荷重変化ををしっかり起こせるように、フォークは動かし、リアは神経質にならないように伸びの減衰を硬さが出ない範囲で硬めました。フワッとしたやわらかい乗り味と、2気筒の軽快感を損なわない程度に安定感を演出することに成功したと思います。非常に楽しい車両にできました。

 

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