サスペンションセッティングの後の先

 サスペンションセッティングの順序は、先ずバネありきでその後に減衰と進めるのが定石というか、本筋です。

 バネ定数とプリロードによりストローク量と高さが決まるからです。これは本質であり現実ですが、これと同時に減衰力が車高に影響をおよぼすのもまた事実です。

イニシャルアジャスタの位置に注目。

 例えば圧減衰を強めると車高は高めになりますし、伸び減衰が強いと車高は低めに出ます。

 ただし減衰力で車高を造るのは邪道と表せます。それは減衰は位置を固定出来ないからです。バネは受けた力に対して一定量しずむとそれ以上は沈まなくなります。短時間でみれば振幅をくりかえすものの、長い時間軸で観ると掛かる荷重とバネ自体の反力の釣り合いが取れる高さに落ち着くわけです。

 それに対して減衰力は、振幅を繰り返し数秒から十数秒をかけて動きを止めるバネを、最小限の時間軸で動きを落ち着かせようとするのが役割です。

 上の事から分かるように、減衰力は高さを決めるものではなく、高さを決めるための時間を作り出す機能です。

 そのために減衰力で高さを作り出すのは邪道だと申し上げました。

 しかし今回預かったデイトナ675のリアショックはバネが硬く、予算の都合で交換できなかったために減衰力の変更で少しでも緩和できないかを考えました。

 邪道ではありますが、バネと減衰力の関係は相互に関係しており、それは非常に密接です。減衰力を最弱にする原因はバネが硬いから。という事も多々ありますし、減衰力を強めるのはバネが柔らかいという逆の事例も散見します。

 今回は表題のとおり後の先といいますか、本来はバネの後に行うべき減衰力変更を先んじて行いました。逆もまた真なりの精神で変更を進めました。

シム組を変更。

 バネが硬い割には減衰力も強力です。ならばと圧減衰を大幅に抜きました。これで前後ショックのO/Hを終えてから試乗を行った結果は以下の通りです。

 純正のイニシャル量は明らかに過剰なので、セット長で185mmと大幅に緩めました。

 試乗した感覚では減によるが沈み込みの邪魔がなくなり、スッと入りかなり良い感触です。伸び減衰はしっかりと効いておりフワフワとする感覚はありません。ただしバネを締めると動かなくなるため、沈み込みでのシャッキリ感はありません。

 ですが仕様変更前の沈まない状態と比較すれば、路面を舐めるように走るため追従性と操縦性が大幅に向上します。

 本来はバネ交換で達成すべきです。そう入っても何もしないで走安性の低いまま走るよりも圧倒的に安全で楽しくなります。それにバネを交換するとしても、減衰力の変更は行うほうが良いため、減衰を先取りしても良かったと考えます。これが後の先と表現した要因です。

 そういった訳でデイトナ675を前後純正のまま良くするなら、O/Hと前後バネ交換でおおよそ20万円の予算があれば、激変させることができそうです。

 また同じ車種が入ってきたら、お客様に提案してみます。

 

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