ハンドルとグリップで変わる減速から旋回の入り口

 ハンドルのグリップといえば、皆さんはどの様に捉えているでしょうか?

 ハンドルグリップの基本的な要素は2つだと考えます。太さと硬さです。 

 1ハンドルバーの太さ
 ハンドルには基本的に二種類あります。ミリかインチかです。

 ミリは∮22.2の直径です。日本やヨーロッパで作られている車両は基本的にこの寸法です。

 インチは太さが1インチの∮25.4です。握ってみるとわかりますが、ホンの3mm強の違いしかありませんが、かなりの差が感じられます。

 2 グリップの要素を分解する
 グリップの要素は二種類で硬度と太さです。

 硬度とはゴム自体の硬さで、悪路を走る場合はグリップ自体を柔らかくして手に来る衝撃を和らげます。反応を高めたいなら、硬くして操作への応答性を機敏にできます。

 ゴムの肉厚でグリップの太さを変えられます。厚くすれば手に来る衝撃を和らげ易くなります。ゴムの弾性を調整しやすくなるからです。

 グリップの構造
 現物を見たり使ったりした経験からは、概ね二種類の仕組みに大別できそうです。
 1つ目は単一素材による作り。グリップを一種類のゴム材質で作り、硬度の変化はない。ただ、厚みや表面の切れ込み(デザイン)で微妙な動きを作り出し、手との一体感を高める様になっています。

単一素材。

 

 ホンダ純正(俗称はロッシグリップ)の人気が高いので、キジマも同様の形状を販売しています。これはゴムの硬度がホンダ純正とは違っているような気がします(体感で判断)。

 

 キジマはTZグリップも用意しています。メーカー純正とキジマなどで、同じ形状ながらゴムの材質により違いを試すのは、安価なれど面白い実験になるはずです。

 2つ目は複合素材を用いる作りです。
 これは作り方次第で多様な製品が作り出せます。一番外を硬くして中を柔らかくする。または外を柔らかく中を硬くなど。
 それに2種類以上を組み合わせれば更に微細なニュアンスを作り出せます。

dominoのグリップ。ホンダデザインながら複合素材。
同じくdominoのグリップながらコチラはTZデザイン。

 dominoはイタリアのメーカーで、ホンダグリップやTZグリップのデザインで、複合素材を用いて反応速度を変えています。

 説明が簡単なセパレートハンドルから話を進めると、左右のグリップバーは独立しており、それぞれフロントフォークやトップブリッジに直に取り付けられます(リジット)。

セパレートハンドルの取り付け例。トップブリッジ上でフォークを介さずに取り付ける例もある。

 バーハンドルは左右のグリップバーが一体となっているのですが、このハンドルの取付方法は更に二種類に分かれます。

バーハンドルの例。左右のグリップを一本の棒で構成する。

 1つ目はリジットでトップブリッジと一体か、またはボルトで直接固定されている橋桁があり、それにバーを固定します。

トップブリッジ一体型。

 次にゴムと金属カラーの複合素材により振動吸収を狙うセミフローティングの取り付け方法があります。

セミフローティング。橋桁とトップブリッジの間に隙間が認められる。

 このセミフローティングはゴムの硬度とクリアランスの作り方でかなり多様な動きを作り出せます。それだけに作り込みがやや難しいように思います。

 実際の操作性
 それではグリップとハンドルの二種類でどの様な操作性の違いが生まれるのかを、私の実体験から解説します。

 グリップの硬度による違い
 グリップに厚みが在ると減速時、手からハンドルに力が加わりグリップが大きく変形します。だから手に掛かる負担は若干和らぎます。そしてブレーキレバーを離して掛かる力が取り除かれるとゴムは元の形状に戻ります。
 ここが重要で、厚みがあり柔らかい場合は大きく変形するので、そのためには時間が必要です。

 反対にグリップが薄くて硬い場合は、変形が小さいので力が掛り、抜ける、その反転するタイミングでスパッと気持ちよく反応します。

 これはグリップがタイアやサスペンションと同じだと捉えられます。つまりグリップの変形量をタイアのたわみ、サスペンションストロークに置き換えれば、理解は容易になります。

 ハンドルによる違い
 上に挙げたグリップと同じことがハンドル形状の違いによって生み出されます。

 バーハンドルでセミフローティングならハンドル自体が変形する上に、ラバーのたわみでハンドルは前方に動きます。抜重すると反転する訳ですが、動きが大きいために元の位置に戻るには意外なほどの時間を要します。

 コレよりもリジットで取り付けられたバーハンドルは変形量が極めて小さく、反応速度が高まります。

 さらにセパレートハンドルならほぼ変形しないので、ダイレクトな印象はより高まります。

 まとめ
 レース用やスポーツ用途が高まるに従い、反応速度を高める方向に進み、ゆったりツーリング向けならば、柔らかく反応速度をゆっくりに設定する傾向にあります。それは用途の違いであり、絶対的な良し悪しの問題とは違いますので、ご自分の用途と車両を見定めると、より楽しい車両づくりが可能になります。

 蛇足というほどではありませんが、ハンドルの形状にテーパーハンドルがあります。

 根本を太くして先端を細くすることで変形量の制御をより緻密にできるのと、部品点数の削減、軽量化が主な狙いではないかと推測しています。

根本が太く、先端が細くなる。

 太いままだと変形しないが、微小な変形は乗り心地や操作性に良い印象をもたらすので、その変形量を設計しやすくしているようです。このあたりは形状学の領域で、昨今のフレームやスウィングアームも同様の設計思想が観られます。

 今回は以上です。

 

 


 

 

Share your thoughts