スプリング交換の勧め
オーリンズの現行型正立フォークですが、スプリング交換の依頼があり作業を行いました。
サスペンション関連で動きを制御するダンパとショックアブソーバ。
前提
サスペンションをリアショックで説明するなら、スウィングアームやリンク周りを含めた総体を表し、ショックアブソーバはダンパーとバネの複合体を言い表すのが一般的です。
フロントフォークはハンドルが取れつけられているステムとフロントフォークの総体がサスペンションで、ショックアブソーバとは呼ばずにフロントフォークとしています。
本題
なぜバネを交換するのかと言えば、他車種流用のようにバネの硬さが全く合わない場合と、車種専用でも乗り手の意に沿わない二通りが主になります。
今回は主に後者の話ですが、車両メーカーや一部の社外品で用いられる複合レートは意外にセッティングが難しいのは、サスペンション業界に身を置いていれば痛感しているのではないかと思います。
柔らかいところから硬くなる屈折点(切り替わりポイント)が設計段階で決められており、作業者(乗り手)の任意に設定できないために車両の動きが思い通りに演出し辛いからです。
そういった事情から私は特例を除き、ほぼすべてのバネを単一定数(シングルレート)で調整しています。
特例とはツインショックのバネにおいて、一部の製品は非常に優秀なので愛用しています。
セッティングの進め方
セッティングの難しさは単体(今回の例で言えばバネ)での性能評価をしない、または行えない事で問題点がボヤけ良否の判断が明確でないために、セッティングが決まらないのです。
バネ交換により、バネ定数の選定を目的とするならばその他の要素は変更せずにバネのみでセッティングを進めなければなりません。
バネによる車高の変化、ショックのストロークスピードの変化は一先ずは触れずに、イニシャルのみでできる限り好みに近づけるように調整を行います。
そこで交換前との変化をまとめ、良否の判断を一度くださいます。
各種のパラメータを調整
バネ単体の性能評価を済ませた後で、どのような変化が起こったのかを観察した結果で他の調整箇所を変更してより高い水準の均衡を狙います。
例えば、バネ定数を上げイニシャルは同じ量とすれば車高は上がります。そうなるとフロントでは旋回性が悪化し、リアならば回答性は増すがアクセルを開けた時の喰い付きが弱まります。
そこでフロントなら突き出しを増やす、リアは車高調整で合わせます。こうすればショック単体の動きが良くなった上に、旋回性も良好となり全体として調和の取れた状態になります。
単体の性能評価と、全体調和を別として評価することを覚える
上の項目で書いたことはサスペンションセッティングにおいて極めて重要です。バネを硬くすると普通は車高が上がる方向になります。車高が変化したことで旋回性が悪化した結果、バネを硬くすると曲がりづらくなる。というような誤った思考形成がなされ、それによりセッティングの幅を狭めます。
実例として私が以前所有していたSRXという車両。こちらはバネを硬くすると曲がらないといったような通説がありました。
ですがこれは先程の説明により誤りだとわかります。純正フロントフォークにはイニシャル調整がついておらずバネを交換すると前があがり旋回性が悪化します。
これを手直しするならフロントフォークの突き出しを増やし、旋回性を担保すれば良いのです。
バネを硬くしたことで減速やアクセルを開けた時の動きは良くなったのに、曲がりづらくなってしまった。というような経験があるかたは、前述の微調整を行い全体最適を考えれば解決策は見つかります。
もしそこで悩む方がいれば、車両ごと預かりセッティングを施す当社では業務も行っておりますので、相談頂ければ幸いです。