56レーシングで学んでいる事

 このブログをご覧になる方はどちらかと言えば年齢層は高め、または知的水準の高い方が多いように見受けます。それはお越しくださいるお客様からも想像がつきます。

 いつもバイクやサスペンションに限らずに色々な事を書いておりますが、今回は共同体と組織論について書いてみようと思います。

 先日の56レーシング夏合宿で認識したことがあります。それは中野監督の父君である満さんがfacebookに書いていた言葉から理解できました。育成を旗印に掲げる56Racingは自ずと若年ライダーがその対象となります。中学生から20代前半のライダーですが、現在はジュニア(育成の育成)と呼ぶべき組織も枠組みができつつあります。
 その中で私は現場でサスペンションメンテナンスとトラックエンジニアを担当していたのが、徐々に立ち位置を変え、現在は一部トラックエンジニアを担当しつつも、工場でサスペンションの整備、(許される範囲の)改造を行いつつも、その実ライダーの精神的な成長とライディング技術の向上がどのような関係性を持つのかを分析しています。

 昨年から当社の社員やアルバイトは数が増え10代後半から60代中盤の10人くらいの方々と作業を共にしました。
 そこで学んだのは個人の能力の差、能力は高くとも社会常識の欠如によりその高い能力を活かせないタイプや、能力は低くとも高い向上心で少しづつでも変化を遂げる人。何度教えても全く変わらず何度も同じ失敗を繰り返す者など様々でした。
 会社組織としては、何度も失敗を繰り返す愚者の作業でも、問題が起こらないような作業手順の開発を心がけるようになった事が、今日の高効率化に繋がっており良い経験だと思います。この過去との比較で大所帯となった会社運営を進める中で56レーシングにおいてのその経験が役に立ちました。

 組織を運営する点において、重要なのは引率者(会社ならば経営者、ティームならば監督)が理念や規則に逸脱する者に対し、しっかり伝える事だと思います。この点は中野真矢さんがMotoGPでカワサキに移籍した際の話を参考にしております。
 これを若いライダーに適応するならば、態度や言動がおかしい場合、その事を率直に伝え、ただ叱責するのではなく自分の立場、ティームがどのように客観視されているのか、などの情報を与え自分が求められ、その場に適した言動を取るように話します。中野監督から教わった事を自社で実践しそれをティームに還元する良い循環が出来ました。

 ここまで考えた時に、このティームとは昔の地域共同体と同質なのではないかと思い至りました。叱ってくれる大人がおり、そこに助け舟を出す別の大人がいる。思い返せば私自身も子供の頃に、散々叱られ面で立たされていた時に、祖父母や親戚の人たちが親に「そろそろ許してやりなよ」と言ってくれました。
 自身が親になった今では、この難しさに直面しています。妙な意地がありすぐに怒っているそぶりを引っ込めるのも格好が悪いとか。しかし、ここに別の誰か介入してくれるだけで、気が楽になるものです。例えば「誰々さんがそう言うなら、仕方ないから許してやるか」の様にです。

 今日も子供のお金遣いに問題を感じ、祖父からもらったお小遣いを母親に預け一月に使える額の制限を設ける、等の話をしていたところ娘(小学三年生)が泣き出しました。このままでは将来、一方的に決め「お前の為にはこれが一番良い」などと言う親に、私自身がなりそうだし、そのような親に娘にもなって欲しくないので、自分の意見を話してもらい、そこに妻の意見を織り交ぜ、結果としてカミさんが出した折衷案(というには大分に甘々に思うのですが)を本人が選びました。ここに核家族の問題点も浮き彫りとなり、祖父母なり若干の客観性を持った人達がその場にいれば、もう少し気楽なのか知らん?とも感じます。
 この核家族化が親の一方的な意見を、子供の為と押し付ける事で大きな歪みが生じてしまい、現在の歪とも思える日本社会で醸成されているのではないでしょうか。大東亜戦争後の七十余年において日本社会がここまで堕落したのは、核家族化や共同体の崩壊が大きな意味を持っていると、40歳を迎える今年になりある程度は自分の中において結論を出せるようになってきました。

 ライダーも子供も、社員の成長も自分で考え学ばせる事が大きく伸びる要素だと思いました。本当に愚か者と呼ぶべき人間も中にはおります。社員やアルバイトならまだ退社の可能性もありますが、自分の子供ならば逃げる訳にも行きませんので、必死で考えるしかありません。
 愚者と呼ぶべき社員に対し、どのような対応を取るのが一番良いかと考えた時に、前述の「一番能力の低い者が作業を行なったとしても、問題を起こさないような仕組み作り」における叩き台になって貰うのが一番良いと考えています。もちろん、この者に対して厳しく接するとか避難して辞めてもらうのが一番簡単なのですが、倫理的にも社会の規則としても正しくないので、お勧めしません。適材適所の言葉通りその人に合った作業をしてもらうのが一番良いと思います。

 今回はティーム運営と会社経営における共通点と課題を考えました。

 

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