外付け式ソレノイド減衰調整式ショックアブソーバ
最近、定期的に確認をしているショックアブソーバーのKYBがネットに公開しているKYB技報ですが、今回も非常に面白い技術情報を確認したので、紹介致します。
これは私自身も昔から感じていた部分を、製造会社が認めその問題点をも指摘している当該箇所について解説します。
概要は全体を読めば、ダンパやショックアブソーバの構造をある程度理解している方には問題無いでしょう。
私の関心を引いたのは5Pの4.2です。
これをもう少し一般的なわかりやすい言葉に置き換えると、減衰調整式のニードル部分を流れるオイルが急激に増えるとオイルロック(ダンパーのリジット化)が発生する。という意味です。
調整はニードルを通路に差し込み、そのリング状の隙間(環状隙間と呼んだりもします)により流量を決定し、減衰の強弱を作り出すのですが、その隙間が小さいと増大したオイル量を流せずにショックのストローク(往復運動)がとまり乗り心地の大幅な悪化を発生させます。
これを防ぐ手法として、KYB技報では電磁式ソレノイドバルブを開発したとあります。
このように新技術の開発の過程として、旧来の問題点を浮き彫りにするのですが、その部分は当社のような設備を持たない零細企業には重要な情報源になります。
話を戻して、ニードルとオイルロックについて言及しますが、この部分は単純にニードル位置だけで話が決まるわけではなく、ピストンとシムの組み合わせで発生する減衰力との調和により、ニードル位置が決まります。
同技報ではフェールセーフと表現するオイルロックが問題だと解説されていますが、私の感覚では二輪車においてこのオイルロックこそ重要です。
シムとニードル位置の関係はある意味トレードオフです。車両(と乗り手)が求める適度な硬さを作り出すには1シム側を強め過ぎるとニードル位置がゆるくなるし、2シム側が弱すぎるとニードル位置がきつくなります。
これは数多くのシム組を失敗、成功した経験から得た体感なのですが、1のシム側が強すぎてニードルがゆるくなると、大きな衝撃を受けてもフンワリ動く乗り心地重視の動きになる反面、車両全体の動きを細かく制御できない印象を持ちます。
逆に2の設定ではキビキビする反面、衝撃が乗り手に直接伝わるような不快感があらわになり、1クリックの受け持つ範囲が大きく、調整による変化量が大きくなり調整がやや神経質になります。これに関してはニードル先端のテーパ角なども影響するため、一概には言えない面があります。
技報ではアクティブ減調SA(ショックアブソーバ)の開発と言いますが、旧来の製品はパッシブ減調SAなわけで、その調整を上手に作り込めば、まだまだ可能性は大きいと感じます。
その上でのアクティブ化を果たせば、より大きな成果を得られるでしょう。もちろんKYBほどの会社であればその辺は万全なのでしょうが、二輪車の市販レベルでその高性能を体感させてもらうのはまだ先かも知れません。
これからも同技報を題材として、ショックの技術を解説してゆきます。