ベンツ 190Eエヴォリューション2
東京のお店から依頼をいただき、Mercedes Benzの190Eエヴォルーション2用純正前後ダンパーのオーバーホールを行います。
ビルシュタインのダンパーの様です。なぜわかるのかと言えば、昨年手がけたポルシェ911タイプ996のダンパーと同じ形状をしているからです。フロントはツインチューブ、リアはモノチューブですが、なぜ前後共シングルチューブを採用しないのか考えてみました。
前は運転席に近く路面の荒れも一発目に受けるので、しなやかさ(特に縮み側の入り)を重視していると思います。反面、駆動の働くリアにはガッチリさせられるモノチューブを使ったのかと推測します。
四輪は前後共にサスペンションシステムを配する空間の制約が多く、そこが二輪車とは大きく違う点だと思います。今回のベンツはFRなので前後共、多少の余裕はありますが、コンパクトカーでFFの場合はエンジンとミッションが左右幅を圧迫するため、アーム関係がとても窮屈に配置されています。そこに長大なストロークを確保すると変位が大きくなりアライメント変化も大きくなります。それは急激なハンドリングの変化を意味しますので、危険な車になってしまいます。
その様な事情もあり、四輪車のフロントにはマクファーソン・ストラットと呼ばれる構造が多く採用されています。これは私の印象ではバイクのフロントフォークと同じ様な仕組みで、ダンパー本体が強度部材です。
コンパクトカーのリアは収納空間や居住性を広く撮りたいという、販売面の理由からやはり窮屈です。当社のアルバイト金岡がラリーに使用するシビックは、リアダンパーがかなり短く、本来であれば取り付け位置をもっと高いところに持って行き、ダンパーを長くして、アームも長ければラリーに向いた大ストロークを確保できるのですが、そうは問屋が卸しませんでした。
資金が許せば、これらを改造してみたら面白い比較試乗ができそうです。
サスペンションばかりに目が行く私には、エンジンや前後サスを理想的な場所に置いた上で、人間を最適なポジションに配し、運転を楽しむ車に乗ってみたいと思っています。その様な車はあるのかも知れませんが、私は知らないので是非乗ってみたいです。