BMW 3シリーズ F30試乗
先週の土曜日に初めて兄の買ったBMW3シリーズのF30という型を運転しました。
現行のG20型はホイールベースが2850mmと一昔前の5シリーズ、ベンツのEクラスに匹敵します。試乗したF30はそれよりも若干短いのですが、それでも2810mmと十分大きな車両です。
F30の前E90にも乗っていましたからそこは直接比較が可能で、読んでくださる方にも有益だと思います。
試乗した車両は320iラグジュアリーです。直列四気筒のターボモデルで最大トルクは270Nmと2.7Lクラスのエンジンと同様です。車のスペックを読み解く際に私はホイールベースと最大トルク(発生回転数も含め)を重視しています。この二つの数字が車両の特性を決定する二大要素だと考えるからです。
ホイールベースの長さがサスペンションでは誤魔化しきれない車両運動を決め、エンジントルクが動力性能を決定します。パワーは力ではなく仕事量であり、常用域で乗員はトルクを強く感じています。車が動くときに軽さを感じるには実際の重量以上に、トルク特性が重要だと考えます。
F30はすぐに軽さを感じる車でした。その要因はトルクの厚さもありそうですが、BMW特有のサスペンションセットもかなり影響していそうです。BMWは伸び減衰が必要量に対し不足気味で、逆に圧減衰は強めです。
路面に対する反応は良いのですが、ショックを吸収せずに路面からの入力を(感覚的には)増幅して跳ね返します。跳ね返す相手は車体ですから車は大きく動きます。ベンツやポルシェは逆に伸びを強め圧縮側は弱めます。こうすればサスペンションはスッと沈み、スーと戻るので穏やかな動きを演出します。
F30はフロントサスペンションがリアとの相対比較で弱く、特に伸び減衰は前後共に不足しています。旋回を開始すると内輪が伸び、外輪はあまり沈まないのでロール軸は外輪寄りの高い位置にあります。ベンツは逆に内輪寄りの低い位置にロールセンターが位置します。
F30は前後のバランスにおいてはフロントは柔らかく動かしつつ、逆にリアはあまり動きを感じさせません。
ここでサスペンションについてまとめると、絶対値として伸び減衰が不足しており、圧減衰は高速側を抜きたい。スプリングは悪くないのですが、リアは若干イニシャルが強めのようです。相対比較でフロントは柔らかくリアは硬い。この中間が良さそうです。フロントのプリロードを強め、車高を取り直せばとても良くなりそうです。
フロントが柔らかくリアが硬いということは、前後のねじれは後輪よりにあるという事です。
これまでに乗ったE46、E90、F10、G30と比較しブレーキはとても良いと感じました。ABSの効きどころも操作性もとても好感触です。ただ、フロントのダンパーが合っていないのでブレーキペダルを話すと「ピョコン」と動きます。これでは運転手も同乗者も楽しくありません。
社外品のダンパーに交換すると大抵スプリングが硬すぎて、減衰も縮み側ばかり強め正直ゲンナリします。やはり好みの車に仕上げるには自分で作るしかありません。
これまで乗ったBMW,Porsche,Benz,AudiそしてFerrariで嬉しく思うのはAピラーの位置です。とても上手に配置してあり曲がる際に顔を向けても、邪魔な位置にありません。反して日本車の殆どは、悪意を持って配置したのではないかと疑うほど、視界の中央にAピラーがあります。これは私には許せない事です。設計に関わる方には是非とも改善してほしいポイントです。
この車両はオートマ(AT)です。E90やいま私が乗るベンツW211のATでギアを変更すると、その意思に従いギアをなかなか変えません。F30はATでも切り替えになるべく従うように頑張ってくれている気がします。このおかげで少しはリアタイアの存在感を得られます。
乗降車のし易さはとても好感触です。E46のクーペはそれがとてもし辛く感じました。
BMWはどの型でもエンジンをなるべく後ろに寄せる努力をしている所為で、ミッションも連動して後ろに寄るため運転席は狭くなります。逆にそのタイトな感じがスポーツ性を感じられるので、私には好ましく思います。体感で判断する車両の前後スタティックバランスは、運転席あたりに思います。ベンツはもう少し前、ダッシュボードかその若干前あたりのようです。これはどちらが良いわけでもなく、思想の違いです。
ただ、私はベンツの方がフロントの安定感を得られるため、BMWもエンジンをほんの少しでも前に積んだ方が、より上質になるのではないでしょうか。しかしそれをすれば、BMWらしさも失われるでしょから、そうはならないはずです。
そこで、私の所有するE46318Ciではサスペンションセッティングで可能な限り、重心位置を前に持ってゆこうと考えています。
まとめると、F30は基本の作りはとても良いと感じました。特にブレーキの質を大幅に向上させたのは、目をみはるポイントです。エンジン特性も悪くありません。あとはダンパーの動かし方で車両をどのように演出するか、これでもっと楽しい車になると思います。
純正ダンパーの改造、社外品を改造する場合でもF30をもっと楽しみたい方は問い合わせください。