クアンタムを改良と手直し
先日、NSR50のクアンタムが完成しました。
以前にサスペンションの専門店ではないところへ仕様変更とオーバーホールに出されたそうですが、思う様にならず当社に依頼をくださいました。
分解しいくつか気になる点がありました。ガスの圧力が高すぎるのと、シム組です。
昔のクアンタムはリザーブタンクがピストンと同軸のシリンダーヘッド側にあり、シリンダーとヘッドの間に弁を設けることで、ガスの圧力を下げられると宣伝していました。しかし途中から変説した様で、リザーブタンクを設けそこに調整ダイアルと複雑な弁を備える一般的なダンパーへと変化し、そのガス圧は当初4Kだったものが10Kとこれも一般的な値になりました。
写真の個体はしかし、22Kもの圧力でガスが入っており、ここまでの高圧はラリー用のショックやCBR600F4iなど一部の車種でしか見かけません。
シムの変更はお客様の要望から組み換えが行われたそうですが、私の印象では伸び減衰は過剰に強く、他方の圧減衰は過少に思えました。ここで高圧のガスが関連します。足りない圧減衰を補う様にガスを入れ誤魔化し、反力の増したのに合わせ伸び減衰を強めたのではないでしょうか。負の堂々巡りです。
そこでシムを現実的な形に組み直し(かわいちゃんRのSTDをベースにしました)、ガスの圧力を適当にしました。その前に、エア抜きを機械で行える様に一部部品に変更を加えてあります。
エア抜き完了後は、しっとりとした良い動きになったと感じます。あとはお客様ご自身でセッティングを施せば普通のダンパーとして、またしばらくは乗れるはずです。
無事に作業が終了して安堵しました。クアンタムは好きな方にはかなり中毒性が高いダンパーの様です。当社も徐々に増えるクアンタムの依頼に対し、交換不可能な部品を作るなどしてなんとか対応して参ります。
今回は定価で8万円程の作業でした。