たまにはセッティングの手法を語り、真面目ぶってみる。
昨晩、梅山がマフラー交換とセンタースタンドを外したCB1100EXのセッティング出しに、夕方から出社しました。
リアが10kg近く軽くなり、特にサイレンサーは車体後部に位置するためその変化は大きく、リセッティングは必須の作業です。
とりあえず純正マフラーと同じセットで走り出し、問題点を洗い出します。スプリングがキツイ印象を持ったそうで、イニシャルを1/4回転抜きます。直進路であれば、かなり穏やかな良い感触になったのだが、アクセルを開ける場面でリアが下がり過ぎてフロントが外に逃げる症状が出ました。
そこで梅山はフロントの伸び減衰を強め下がったリアに対応し、フロントが上がらないように仕向けました。私はこの時点で問題は解消しないと確信していましたが、彼の経験を積ませるためにあえてその仕様で走らせ、評価させました。
予想通り解消せず、セットを元に戻して今度はリアの車高を上げました。今度は曲がると言う意味で、旋回性は狙う方向性に近ずいたようですが、なぜかフロントの操作量が増え、何かシックリこない様な事を言います。
ここまで来て、問題の本質が何処にあるのかを理解させる段階となりました。アクセルを開けてリアが低い、その様に梅山自身が感じたのに、その解消方法はフロントが上がらないようにする。これでは真逆です。リアに感じた問題はリアで解決する。最初から入り口を間違っています。
次に、アクセルを開けてリアが低いと言っているのに、車高を上げる。これではアクセルを開ける前からリアが高くなります。だから「直進中」「減速旋回」「加速旋回中」も常にリアが高くなります。狙っているのは「加速旋回中のリアの高さをどう出すか?」が問題の本質だったのです。
フロントの調整は論外なので、リアの車高調整で姿勢を作ろうとした梅山の意図はわかります。これを私がどの様に感じ分類し、セットアップを進めるかといえば、次の様になります。
アクセルを開けた際にリアが低い。これはつまり動的姿勢(ダイナミックバランス)が悪い。ではどう解消すれば良いのか?イニシャル量を増して、アクセルを開けた時にリアをもっと「持ち上げる」か、伸び減衰(リバウンド又はテンション)を抜いてリアを「伸びやすく」する。この二つです。
では上記で示した二例をどの様に選ぶのかと言えば、それは他との兼ね合いです。バネ系で解消すれば直進時のギャップ走破性が犠牲になるかもしれない。伸び減衰を抜けば全体的にフワフワするかもしれない。その様な他の状況での見極め、全体としてどこでも良い感触が得られるのかを判断します。
今回はイニシャルを最初に1/4抜いた状態を良しとし、伸び減衰を抜き、圧の減衰も少し抜くことで最終的に落ち着きました。
最後に車高を変える場合の意味を説明すると、これは前述の動的姿勢に対して静的姿勢(スタティックバランス)と呼びます。この変化はバイクが動いても動かなくても、人が乗ろうが乗るまいが、それに関係なく姿勢が変化します。
最近の私は出来るだけ動的姿勢を作り込み、これ以上は難しいな、と感じてから静的姿勢の変化に移ります。そこで新たにダイナミックバランスを模索し終えたら、スタティックバランスを再度変更してゆきます。
以上の様に、サスペンションセッティングは極論、「硬いか柔らかいか」と「高いか低いか」の組み合わせで出来上がります。この両者を色々な状況に当てはめどちらを選択するのか、それがセッティングだと定義づけています。
機会があれば、また私のセッティング手法について解説致します。