シムに求められる要素
ダンパー内部で減衰を発生させる要素は摩擦抵抗とピストン、シムで発生させる減衰です。
今回は後者を取り上げてみます。
ピストンとシムの、さらにシムに焦点をあてます。
シムは通常、内径、外径、厚みの三要素で選別しますが、その前提には材料と表面処理があります。この二つを決定するのはメーカーの仕事で、私どものような小さな会社は、ダンパーメーカーが用意した品を使うしかありません。その中でも、自分好みの製品を選ぶ事でより狙いの動きに近づけます。
シムは簡単に言ってのければ「バネ」です。ですからどの様なバネ材を使うかが重要です。多様なメーカーを見ていると、その良し悪しも段々と判断がつく様になります。
例えば、長期使用で割れてしまう物もあります。バネですから疲労により弾性を損なう品もあります。バネ材のシムはメーカーにより交換時期が指定されている場合があり、当社で扱うFGは距離による指定があります。
オーリンズに関してはメーカーの意向もあり、交換、設定変更の場合同社の品を用います。
シムは表面の荒さが意外に重要な役割を担います。このざらざら具合がシム同士の密着を防ぎ、張り付かない様にします。ですから鏡面のピカピカ仕上げは基本ありません。SHOWAは表面の仕上げがツルツルしていますが、凹凸はしっかりあります。
KYBはかなり荒く、顔も映り込まないしざらざらも際立っています。
オーリンズは数種類の品が、なんの選別もなく入り込んでいます。SHOWAっぽい仕上げもあれば、ややKYBに近い物も存在するのです。
ビルシュタインはその材質と表面が均一にざらついています。KYBに近いがややSHOWAのツルツル要素を取り入れたくらいです。
FGはそれらとは若干違った仕上げです。表面がざらついていると言うよりも、明らかな溝の様な物が多数見られます。これは意図した仕上げです。
シムは厚みと外径が主な選定対象となりますが、実はもっと需要なのは内径です。これは後から変更するのが極めて難しい部分ではありますが、とても重要な要素です。ただ、この件に関してはあまり他社に知られたくない部分でもあるため、説明は省きます。
外径と厚みは多くのメーカーで、1ないしは2mm刻み、厚みは5/100mmが一般的です。KYBなど一部のメーカーは2/100mm刻みで設定している場合もあります。よく見かけるのは0.12mmの様な厚さです。ミリ仕上げと言うよりインチで作るとこの様な寸法になる様です。
上記の様に内径、外径、厚み、表面仕上げに前提条件としての材料が主な条件です。
現代でも商用車のリア、トラック、古い乗用車はリーフスプリングと呼ばれるバネが用いられます。数枚の板バネを重ね合わせ、狙った反り(サスペンションストローク)を作り出します。ダンパーのシムもこれと全く同じです。重ねる枚数、外径、厚みを変化させ直線的ではない減衰を演出します。
本日はこれまで。この件に関しては近いうちに動画でも説明してみようと思います。