CB1000Rのオーリンズ を仕様変更

 先週依頼があり、車両を引き揚げたCB1000Rのリアショックを仕様変更です。

 当社でリアにFGのFFX(ツインチューブ機構)を取り付けていましたが、バイク屋さんの甘い誘惑があり、オーリンズに交換したそう(FGもまだ持っているそうです)。

 お客様のところまで車両引き上げにゆき、軽くまたがりその感触を確認した際の、私の所感を書き記した後で、今後の方向性を提示してみます。

 私見ではCB1000Rは数年前に発売され、ある種の潮流を作り出した、MT-09の流れの中にあると言えます。この流れには最近のNINJA1000やZ1000も当てはまります。これはどのような乗り味かと言えば、フロントタイアを軸にかなりコンパクトに曲がる、癖の強い車両たちです。伝統的なネイキッドのようにリアタイアを軸に安定と安心を伴わず、フロントタイアだけを当てにして曲がり、リアは荷重がかかりづらいため、倒し込みからアクセル開まで常にリアからのスリップダウンに気を使わなければなりません。

 このCB1000Rも同様です。ホンダ純正のサスペンションがそのような設定であるため、オーリンズもそれを継承しています。敵を作る可能性もありますがそれを厭わずに申し上げますと、私には全く理解できないのです。
 好みのやセッティングの問題。では片付けられない、重大な見落としを車両メーカーがしているのではないかとの疑義を持っています。
勿論、メーカーが求める物の対価として、私が感じる「重大見落とし」を許容している可能性はあります。しかしそれは、私には許せる水準ではありません。そこでかなり大幅な作り替えを提案しました。

 お客様はFGの乗り味を体感していたため、オーリンズへ換装し走り出してすぐに「思い通りに動かない」と感じ、しかし折角買ったオーリンズをすぐにFGへ戻すのも悔しいとの思いから、仕様変更を依頼くださいました。

 ホンダ純正、オーリンズともに私が感じる致命的な欠陥は、車高です。リアが滅法高く安定しません。そこでリアを大きく下げます。次いで、スプリングレートにも問題を感じます。私はこのCB1000Rのリアのレバー比を測定していましたし、一度FGを作った経験からバネ定数に関してもこれが良さそうだとの当たりはつけてありました。
 前回のFGと全く同じ仕様を作っても面白くないので、スプリングレートとダンパ自由長は更に理想値へと踏み込んでみます。

 シム(減衰を発生するのに重要な薄い円盤状の板)の組み方も一直線で色気にかけます。これをしっとりと動くように変更しようと思います。シム組に関しても、いつか動画で話してみたいと思っています。

 予算は車両引き上げや、交換部品、セッティング料金を含めると最大で15万円超。安く済ませる場合でも10万円程になります。「オーリンズ がもう一本買える!」との声が聞こえてきそうですが、全くその通り。

 本当に良い物を求めると時間もお金も際限なくかかります。しかしお金と時間を費やせば、本当に良い物が手に入るのかと言えば、それはまた違います。そこには求める形を具現化するための技術力とセッティング能力が不可欠です。そのため、私共は常に技術と感性の向上に努めております。

 外側のダイアルなどでは賄い切れない、一段も二段も上の上質な乗り味を求める方は、是非一度相談ください。

 

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