Lツインエンジン搭載車の考察

 前回と同様に、動画の下書きを元にしてドカティの乗り味を考察しつつ、バイクの基本特性にも言及してゆきます。

 

 Vツイン Lツイン 直列エンジンとの重量配分の違いによる運動性能の違い

 

 直列4気筒と90度Vツインの亜種であるLツインのドカティを例にあげ、重量配分がどのように変わるかを説明する。

なぜドカティのLツインを題材に上げるのかは、V型エンジンの特性をより顕著に現れるからである。

 バイクの重量配分はエンジンの搭載位置が大きく影響する。ホイールベースを同一とし、その内側にはエンジンとスウィングアームが配される。

 その場合、Lツインエンジンはクランクシャフトのセンター位置「クランクセンター」がよりリアタイアへ寄る事になる。

 

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 それはなぜか?直列4気筒と同じ位置にクランクセンターを置くと、フロントバンクのシリンダーヘッドがタイアと接触する。そのために後方にエンジンを置く必要がある。つまり車両の中で一番重い部品であるエンジンが後ろに行くため、重量配分は自ずと後ろ寄りになる。

 

 問題は重量配分がバイクの操縦性にどれほどの重要性を持つのかである。以前、ワールドスーパーバイクが二気筒1000cc、四気筒750ccであった時はドカティは強かった。しかしホンダが2気筒1000ccになった時は早速チャンピオンを獲得していた。これはつまり排気量が大切であった証拠である。ただし、ホンダのVツインはドカティと比較し、重量配分は前方にあった。

 同一排気量で同じ形状のエンジンを積み、前後荷重のみの変化を直接比較しなければ、分担荷重による良し悪しは判断できないし、レースでの勝利が必ずしも全ての面において有利ではない。が、レースで勝てると言う事は、ライダーの思い通りになる訳であり大きな要素なのも間違いない。

 

 何はともあれ現存する中で、Lツインほどフロント荷重を稼ぎづらいエンジン形状はないと言える。次に、ホイールベースが同一でLツインの場合に、エンジンが後方に搭載されると言う事は、反面スイングアーム長が短くなるのである。

 これは明確に問題点が存在し、長短二種類のアームで同一のホイールストロークが行われるなら、短いアームはその変化量は大きいと言える。

 

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 短いアームの線を追えばわかるが、ストロークが深くなるに従い、リアタイアがフロントから遠のくのが、長いアームよりも変化量が大きいと確認できる。

 対して長いアームの線は変異が少ないのが認められる。

この事以外にも、フロントブレーキを握りながらリアサスペンションを沈める実験からわかる通り、

スウィングアームが動くとリアホイールも回転する。その回転量は角度変化と同様に、短いアームは回転量が多く、長いアームは少ない。

 直線は曲線と近似している。十分に半径の大きな円はある部分を切り取ると直線と近似している。つまり円の一部を拡大すれば直線と同様である。アーム長が無限大であればホイールは単なる上下動となる。こうなれば角度変化はないに等しい。

 つまり長いアームは設計値からの変動が少ないので、一定で穏やかになる。現代のバイクは短いアーム、少ないフロント分担荷重を嫌う傾向にあるのは、競技や販売車両を見れば明らかであり、逆に過去の車両はリアへの大きな分担荷重と変異の大きな短いアームが目立った。

 MotoGPでドカティとブリジストンが組んで速さを獲得した頃、リアタイアの剛性が高く、ヤマハなどのは後輪分担荷重をどの様に増すのかが課題になっていた。これはドカティがリアタイア依存度の高い設計であり、フロント依存度の高い他メーカーの車両ではタイアのグリップを引き出せなかったのではないだろうか。

 ここまで書き記し、ある程度の結論らしきものが見えてきた。それは結局タイアを活かせるかどうかで決まる部分が大きく、タイアメーカーと車両メーカーの共同作業において、どれだけ双方の合意が高い水準で達成されるかにかかっていると考える。

 総論としてドカティの乗り味はフロント荷重が少なく、反対にリア荷重が大きい。フロント荷重が少ないから曲がらないとか曲がりやすいなどと言う事はない、しかしそれはコーナーリングや乗り味に大きな影響を与えるのも間違いない。

 これらは、バイクを二次元で捉えた場合の話である。次回はまたドカティを題材に違う面から、再度二次元を切り口にドカティを考察してゆく。それらを踏まえ、最後の回では私が感じるドカティの乗り味を三次元で捉え、感覚論と論理を交えて説明してゆくつもりである。