SHOWA,BFFフロントフォークとZX-10R
またまたZX-10Rが入庫しました。
以前から何度も依頼を頂いている方が新たに10Rを購入し、操舵性や旋回性を好みにしたいとの希望で車両を預かりました。
こまでに何度も動画やブログで取り上げて来ましたので、お時間の有る方は是非御覧ください。
同フロントフォークの特徴はガスで圧力を掛ける、クローズドカートリッジを採用している点です。アクスルブラケット(ブレーキキャリパの取り付け部分)からガスが入っているリザーブタンクが誇らしげに顔をのぞかせており、メカニズムがどうなっているかという好奇心を沸き立てます。
減衰のピストンやダイアルのユニット、リザーブタンク等の関連部品が多いためバネ下重量がかなりあり、路面追従性は難しい面があります。
しかしそれを補っても余りある程の利益を享受出来ます。高温でかつ長時間の使用でも安定した性能を発揮し、ダイアルの変更は他社のTTx構造と同様に伸びと圧の干渉が抑えられてメリハリの有る調整が可能です。
しかし何度も繰り返し書いて(動画でも)いるように、基本設定が私には合わないと感じています。
メインのスプリングは硬すぎます。街乗りも考慮すると1.05K位が使える限界だと思いますが、サーキットでも左記の数字をもつフォークスプリングはなかなか用いません。それ以上の硬さを持つ10Rの純正バネはやはりキツイ設定です。
またトップアウトスプリングも硬いために、フロント周りが地面側に寄せられます。この二種のバネ設定が悪く有効ストロークが少ないため姿勢変化が小さく、リアに十分な重みをかけられず、アクセルを開ける場面では楽しさが少なく、もったいない。
フロントの設定を上手にまとめるだけで車両から得られる印象は大きく変化します。近年の車両は純正ショックでも設定次第でかなり上質な印象をもたせられ、流石に高額な車両だけあるなと実感する次第です。
反してリアショックの基本設定の上手さには舌を巻きます。
サーキットはいざしらず、街乗りではO/Hによるエア抜きでリアショックの性能が本領発揮されます。私は純正状態のバネで十分と考えますが、体重や使い方により純正から±0.5~1K位動かせば満足のゆく性能を得られるはずです。
そしてフロントの設定を見直せば、姿勢が変わりリア周りの希薄さ、それは動きが分かりづらいとかタイアのグリップを掴みづらい等の意味ですが、それを大幅に解消出来ます。
一番の悪さを働いているのはフロントの低い車高であり、それを作り出しているのは硬い二種のバネです。
という事で、今回もそれらの設定を見直しつつO/Hも行って上質な車両に仕上げて行きます。