SRVの乗り味、エンジンが車体を決める
昨晩試乗したSRV250の乗り味について言及したうえで、再三話題にしている軸感についても話を勧めます。
SRV250を勧めている理由の一番は、エンジンのボアストローク比がロングな点にあります。二輪車は一般にロングストロークと言いつつも、スクエアに近いショートストロークを「ロングストローク」と呼ぶ事も多々あります。私も以前所有していたSRX400などがこの例にあたります。
ロングストロークの代表はハーレーや、ヤマハのMT-01などがあります。SRVも想像した通りの粘りのあるエンジン特性で回転上昇は穏やかですが、アクセルに対して過敏に反応しないので初心者の方や、ロングツーリングにも向いた仕組みだと思います。
ハーレーは古いスポーツスターの883などが粘り強いトルク特性を持ち、1200ccなどと比較してパワーがない分だけ、エンジン回転上昇が遅く息の長い加速を楽しめました。もちろん絶対速度は遅いのは間違いありません。しかし楽しい乗り味です。同様の乗り味をSRV250のエンジンは持っています。結局のところ2輪、4輪問わずエンジン形式と特性が車両を決定付けるとの結論を私は持ちました。
その空冷V型2気筒の250ccで軽量、その恩恵で幅の狭いフレームとタイアを可能にしたSRVですが、軽量で幅が狭いデメリットを感じさせないように、足回りのセットは非常に考えられた造りこみです。18インチホイールで前後接地面を確保してタイアに穏やかな特性を持たせ、フロントは軽く動くセットに対しリアのダンパーは伸びを強めに効かせた仕様です。なぜかと言えばギャップのアタリをフロントで逃がし、リアも入力側だけはすんなり動かします。しかしリアの伸びダンパーは強く効かせて、車体に不要な振動をさせません。このことがピッチングセンターをかなりリア寄りにしています。乗車感覚としてはリアアクスル近辺。スイングアームピボットよりも確実に後ろだと思いました。このピッチングセンターをどこに感じるかが、再三申し上げている軸感です。
ピッチングセンターは前後位置と、高低の二つの観点から読み解きます。ピッチングセンターの理解は意外と簡単な話です。ここで思考実験を行ってもらいます。仮にフロントフォークは通常の仕組みとし、リアは固定式を備えている場合にブレーキで何が起こるかを想像してください。フロントフォークは沈みリアは固定式なので全く変化しない。その時にバイクのピッチングセンター(回転軸)はどこにあるか?
答えはリアアクスル(リアホイールの軸)にあります。逆にフロントを固定しリアを動かした場合の軸は、フロントアクスルにあります。現実には前後サスペンションが動くのでホイールベース(軸間)のどこかに存在する事になります。SRVのリア寄りの軸感とは、現実にどのようなサスペンションの動きになっているのでしょうか?
その答えはフロントが柔らかくリアは硬いという事です。軸感を感じ取るにはリアの伸びダンパーを調整してみれば、かなり早い段階で理解できるようになると思います。リアに軸感を置く事は、穏やかな特性を車両に与えます。
軸感の話についての第一段階はここまでとします。基本の動きだけを書き記しましたから、疑問を持たれた方はバイクに対して深い理解を持っていると思います。今後はホイールベースが運動性能に与える影響につていも徐々に私見を述べてゆきます。
SRVの車体に戻ります。軽量な車体は一般に美徳とされていますが、私は大きなデメリットを感じています。軽量な車体は振動が細かく、スポーツ性は高い反面外乱にたいして弱い一面も持っています。エンジンに対して適切な重量はあると思いますが、重いバイクのメリットも考えてみて損はありません。細い大径タイアは見た目の迫力はないのですが、軽い操作性に対し大径による安定性を持っている素晴らしい特性です。
SRV250は安価なセカンドバイクではなく、しっかりと考え抜いて造りこんだ良質の250ccだと感じました。私の所有するBT1100やヤマハのフラッグシップともいえるXJR1300と比較してもより上位にあると思います。とは書きましたが案外、「簡単に造ったらすごく良かった」という事もありますが、とにかくSRVは良いバイクです。