VTR1000SP2
本日の動画ではSP2の前後ショックを仕様変更した話を、長々と語りました。
これまでに何度も説明していますが、SP1・2問わずに最大の懸案事項はフロントフォークのイニシャル量不足です。これを解決するだけで、足回りに抱える問題は大半が解決し後は作り込みというか、細かい好みを仕上げてゆく作業になります。
と言う訳で動画内でも話していますが、ブログにて文章化して自身の思考をまとめたり動画では伝わらない部分を解説してみようと思います。
これまでとは違った感触を求めて、新たなセッティング手法を取り入れました。しっかり目のスプリングレートでイニシャル量を少なめにすれば、サスの動き出しはふんわり柔らかく、奥の踏ん張りはスプリングレートで演出できます。使い古された手法ですが実効性が高いので、価値はありますし私も好きな手法です。
ただ、奥の踏ん張りに関して初心者の方にはやや扱いづらい面があります。それは意図して入力を行わないとサスが動かしづらいので、知らない方は曲がりずらいと感じる事でしょう。
新たに採用した手法は上記と逆で、硬くないバネにプリロードを適量かけて動き出しからボトムまでを平均的な動きとして、二次曲線にならないよう配慮してあります。
初期のスプリング圧縮量がそれなりにありますから、動き出しはやや(ほんの少し)張った感じを持ちます。しかしブレーキを握れば軽く沈み、そのまま動きを止めずにムニャムニャと動きます。
この動きを取り入れるための契機となったのは、動画で観ていたショックの動きです。マン島の荒れた路面を走る車両やトライアル車。それにモトクロッサーなどです。一定の動きを演出できれば新しい世界が開そうだと閃き、これまでも近いセットアップを試してきました。今回はそれを明確にしてより推し進めるセットになっています。
メーカー純正の前後サスペンションの多くは、明確に弱いバネにプリロードを沢山かけています(最近はこの傾向から逸脱する例が多くなってきましたが)。だからストロークの深い位置でも半力が弱く、ブレーキを握り込むような場面であったり、ギャップの走破性が高くありません。
バネが柔らかいので乗り心地は良いのかと考える向きもありますが、さにあらず。衝撃吸収性が不足しており乗り心地も良いとは言えません。なぜあのようなセッティングが主流なのかは理解に難いが、否定も批判もする気はありません。ただ自分の好みに合わなければ変更する他に、しようがないのです。
冒頭に説明した硬めのバネに少ないプリロード。その逆。両者の差はそれほど大きくはありません。前者ならフォークスプリングを0.95~1Kを選び、後者ならば0.9~0.95Kです。
この差の中でどの様にショックの動きを演出するのかが勝負になります。そう言った意味で、今回のSP2は極めて満足のゆく仕上がりでした。
SP1と2を合わせて4台ほど前後ショックの仕様変更を行なってきましたが、その経験から知り得たのは「純正の減衰設定でもそれほど悪くない」です。今回の依頼では減衰に関しては全くの手付かず。それでもかなり良い感触です。
フロントは純正のスプリングレート1.05Kでは沈み込みが重ったるいので、圧減衰を強められません。そこでバネの値を弱めて減衰の自由度も獲得できます。減衰を弱めてバネの自由度を確保する事も手段としては可能ですが、二気筒のリッタースーパースポーツを街乗りするには硬いとの判断から、バネを弱める手法を選んでいます。
写真の入ったSDカードを会社に忘れて、自宅でブログを書いております。後日、写真も載せますのでお待ちください。近日、リアに関する記事も上げますので楽しみにしてください。