Eクラス W211を運転
メルセデスベンツ、W211に乗りました。
妻が最近までAクラスに乗っていた事もあり、ベンツの車両作りに対するスタンスはおおよそ想像がついていました。Aクラスの短いホイールベースでしかもFF、前が重いのは当たり前なのに自然な動きに仕立てる技術は凄いと感じていました。
そこでEはどうなのかと興味津々で車両の動きを感じてみました。一番驚いたのは、通勤路にあるかなり盛大なギャップを超えた際、ほとんどそれが無いかのような振る舞いを見せる点です。スズキ・パレット、スウィフト、BMWのE46、E90、F10、ダイハツ・ミライース等の様々な車両、タイアサイズで超えて来たギャップですが、素晴らしい出来栄えです。
タイアは16インチでミシュラン・プライマシーです。一発目のインパクトをスルッと逃し少し大きめの沈み込みと、許容できる範囲で最大限弱めた伸び減衰が、大きく動いたサスペンションをほぼ一発で収めます。10mmくらいストロークを減らしイニシャルを少しかけ、伸び減衰をもう少々強めれば快適なスポーツセダンにできそうです。そうなるとAMGを買った方が良いのでしょうか?BMWのMもベンツのAMGも乗った事がないので分かりません。
一番良い部分はブレーキです。対向ピストンを持つキャリパーの車は初めてでしたが、ボディー剛性と相まって、絶対効力も高い水準な上に扱いやすさも際立っています。ABSが効くのもタイアロック寸前で、タイアが鳴いているのにABSが効かない領域をしっかり用意してありながら、その限界域でもペダル調整によりロックさせたり抜いたりが容易に可能です。
重量配分としては前が重いのは確かですが、リアブレーキもしっかり効いて、急ブレーキをかけてもグッと止まります。
これはブレーキにも関連していそうなのですが、ボディー剛性が高いお陰かギャップを超える時、フロントタイアが衝撃を受けるとリアショックまで動くような感触があります。バイクに例えると、フロントブレーキをかけノーズダイブが起きるのに、リアサスペンションも沈んでいるかの様な動きと同質です。このように感じさせる車両は、ピッチング時の瞬間中心が良い位置にあると推察できます。この検証は秋以降にデータロガーにて測定し、視覚化しようと考えております。
ハンドルは遊びは大きめですが、だるさはありません。初期のブッシュたわみで作っているのかセンターはしっとりと感じます。緩い車両だと単にセンター付近に空白区間があるだけ(フラフラするよう)に思えるのですが、ハンドルをぴったり挟み込んでいるような感触があり、遊びの多さをブッシュの初期たわみで作り出し、荷重がかかると変形が止まりハンドル操作に反応していると思います。が、この辺りの構造は学んだ事もなく勝手な想像に任せて書いているため、気にしないでください。
おじさん向けのセダンという事もあり、アクセル操作に対する反応の仕方は極めて鈍重です。踏み込んでクッと加速せずに「フワッ」と踏み込み初期でかなり緩さがあります。しかし長距離を疲れずに運転するならこの方が良いはずなので、車の使い方次第かと思います。実際200Km以上の距離を走りましたが、シートの質感の高さも手伝い疲労感は皆無でした。
夜間走行ではヘッドライトの明るさが、疲労度を下げるのには重要そうです。W211はとても明るいライトを持ち、街灯のない道も怖くありませんでした。
気になる点もあります。後部座席の乗降者が少々しづらい。これはCピラーが頭に当たりやすいので、少しかがみ気味に乗り込む必要があります。身長165cm(胴長)の体型で当たりやすいので背の高い方は面倒かもしれません。
他に、これは交換条件(トレードオフ)とも言えますが、機密性が高く質感も高くなる反面、ドアの閉まりがかなり悪いです。しっかり閉めなければ簡単に半ドアになってしまいます。
色々と書きましたが、新車価格がベースモデルで600万円を超える車両だけあり、作りの良さを十分に感じられました。
総論として、車(バイクも含め)の良さは素性によりほぼ確定すると分かりました。重量配分(エンジン搭載位置)やボディー剛性がブレーキの効き方から加減速の振る舞いまでを決め、素性が良ければサスペンションに限らず各部のセッティングを容易にすると思います。
バイクの良いところは(反面難しさにも直結しますが)車体が小さい分だけフレーム剛性を上げやすい点です。物質は長くなれば剛性が下がってゆきますが、二輪車はホイールベースが1300~1600mmと四輪比較でお概ね1000mm以上短く、かなり硬いと思います。その反面、短い物を上手に狙った分だけしならせるのは難しくなります。これはダンパー内部のシムにも当てはまる理論です。だからダンパーも素性の良さ(各部の寸法)が重要となります。