BMW・S1000XRの前後ショック脱着手順のあらすじを紹介、フロントフォーク編。

工数が多く面倒な作業なので、手順書を作りながら作業を進めました。これまでに何度も依頼を受けてきた車両ですが、担当者は作業練度が上がる反面、関わっていない人間は全くの門外漢になるため、私が自分で作業を行い、手順書を作成、それにより会社全体としての技術の蓄積を考えての事です。

フロントフォーク脱着
ではフロントフォークの脱着から紹介して参ります。

フォークの脱着は比較的簡単な作業です。その第一の要因は、標準でセンタースタンドが装備されており、専用のスタンド等が不要だからです。

必要な工具
BMWに限りませんが、欧州車はトルクスと呼ばれる星型の工具が必要となります。これを一式揃えてなければ、脱着は叶いません。他には一般的なソケットやメガネレンチがあれば大丈夫です。ただ、日本車と違い13mm、15mm、16mmに18mm等が必要になる場合もありますので、注意が必要です。

今回はブレーキキャリパボルトの頭が13mmでした。

部品を外す前に気をつける点

強い力で締結されているボルト、ナットはホイールに車重がかかった状態で緩めておくのが吉です。スタンド等で車両が浮いた状態では不安定になり、大きな力を掛けるのに適さない場合もありますので、注意してください。

脱着の手順 フロントフェンダ

フロントフェンダはボルト四本で用意に外せます。ブレーキホースのホルダやガイド、大きな張り出し等により、ホイールを外した後でなければ外せない車両もありますが、当該車両はそのような事もなく、最も簡単に外せる部類だといえます。

ブレーキキャリパ

前述の通り13mmのソケットかメガネレンチを用いて、緩めれば簡単に外せます。ディスク径も大きくないので、キャリパとホイールの干渉もそれほど気に留めずに外せます。しかもアクスルブラケット側にガイドがあるため、ボルトを外してもキャリパが脱落しないので助かります。

ABSのセンサを外す

この手の部品は、組み付けを間違いセンサ本体とロータが接触する場合があります。従ってしっかりと組み付けの順番や部品の並びを覚えておかなければ、手痛い出費を伴います。

当社でも新車から外して、そのまま組み付けたのにセンサとロータが接触する事例があり、センサを交換した経験があります。組み付けの際にも接触をしっかり確認しなければ、問題が発生しますので、気をつけて分解してください。

ABSセンサとロータの隙間。

配線を留める金具は、外した本人ならば難なく元に戻せますが、担当が入れ替わり組み付けから始めると、元の状態が把握できていないので、何度か配線と金具の収まり具合を確認する必要があり、無駄な時間を費やします。そのため、写真、絵または文字で明確な指示が必要です。

ホイールを外す

ホイールはアクスルシャフトを留めるピンチボルトを緩め、24mmのヘキサゴンレンチを用います。かなり大きいので、商業でない方は持っていないかもしれませんので、事前に入手してください。

その際は差し込みが1/2インチだと力を入れやすく良いと思います。

アクスルシャフトは右差し(車両に跨って右)で、左側にはナットとなる部品が挿入されますが、周り止めがないため、ピンチボルトを締めた状態で緩める必要があります。

フロントフォークを外す、その前に

右のフロントフォークは問題なくさっと外します。そして本題の左フロントフォークです。

電制の配線が左フロントフォークからメーター右側の下へ伸びています。先に当該箇所のカプラを外さなければなりません。やや作業がしずらいため、カプラを留めているホルダごと手前に引き抜き、その状態でカプラの接続を切り離すと作業が楽になります。

カプラは写真中央、フロントフォーク全部に横向きに接地してあります。

このカプラを外しやすくするためにも、右フロントフォークを先に外しておくと作業空間に余裕が生まれます。組み付けは逆に、右フロントフォークを後にした方が楽です。

突き出しは当然先に調べておかなければなりませんが、当社の実測値はアンダーブラケット下端からアウター端まで238.5mmでした。

作業所用時間

外すだけなら工具が揃って、練度が高ければ30分あれば十分です。初めてで手順書を作りながらでも1時間程度でした。

組付け手順

 とても簡単なので大部分を省略しますが、重要な点を記しておきます。

 手順をしっかりと見極める

 基本的にはどのような作業も分解の逆工程で進めて行きます。そうしなければ作業がし辛い、または組付けが不可能となる場合があります。

 タイラップ(結束バンド)の位置を記しておく

写真よりも絵(スケッチ)のほうが確実性が高いと思いますが、写真でも内容りはよほどマシです。そういったわけで、タイラップの数や位置を絵と文字、最低でも写真で残しておくほうが、後の作業が楽になります。

 締め付けの確認は声出しと、複数回確認を徹底する

 ネジ関係の緩みはご法度です。自分の車両なら死んでも自己責任ですが、他人の車両を預かる場合は、笑い話ではすみません。そのため、工具が入る場合はトルクレンチを必ず用いる。また確認は都度声出し確認を行います。
 それにトルクレンチで締め付けた後にソケットやスパナで締め付けトルクに間違いがないかを確認します。私は一箇所に付き3回は工具を当てるようにします。
 減速装置やエンジンオイルのドレンボルトなど、重要箇所に関しては納車前に再度確認を行っています。

 ABSの配線は特に注意が必要

 車種によってはかなり分かりづらい金具があります。これを誤るとワイアーがロータやホイールと接触しABSの問題を知らせるインジケータが発光するので、大きな問題になりますから、気をつけて作業を進めて下さい。

本日は車重を載せて(1G)から行う

 ホイール関係は実際の荷重が掛かる場面を想定し、締付け部分に車重が掛かるようにしてから本締めを行います。そうしないと大きな入力により部品がずれて、それがネジの緩みに繋がります。そのため、可能な限り実際の使用環境に即した状態にしたあとで本締めを行います。

 また減速装置のネジを締め付ける際には、回転方向に部品を寄せる努力をしてから締め付けを行います。この理由も上記のためです。

 とい訳で簡単ではありますが、2019年< のフロントフォーク脱着作業を紹介しました。本件に関する質問等は受け付けておりませんので、当ブログを参考にがんばってください。また作業は法に従い、資格の無い方は有償で他人の車両を整備しないように注意して下さい。

 本ブログは作業を推進するものではありませんし、結果の全てに対し当社は一切の責任を負いませんので注意願います。

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