CB1300SF・SC54のセットアップが完成
昨夜から続いた雨も朝には止み、昼過ぎには路面がほとんど乾いたのでCB1300SFのサスペンションセッティングを行いました。
これまでに、一番大切な部分の動きは梅山に造らせておいたので、それらを取りまとめる作業から開始しました。しかし核となる部分は出来ていたとはいえ、作業量は多く残されていました。まずフロントフォークの突き出しを変え、リアのイニシャルを変え、リアの車高を変え、アクセルワイアーの遊びを調整して、やっと本格的なセットを出す下地が完成し、ここからは微細な変更を繰り返します。
フロントの動きがしっくりこないので、イニシャルを1/4や1/8回転締めたり緩めたりを繰り返し、ある程度納得したところで、リアも同様にイニシャルを動かし、次いで前後の減衰を変えてゆきます。一通りまとまったところで、大槻と梅山に試乗を行ってもらい、方向性に問題が無いかを確認して、少し休憩した後にまたテストを開始します。
一度休憩をはさむのはセッティングに入れ込むと視野が狭くなるため、間を入れて一度感覚をフラットにしてから取り組み直します。やはり少しづつ硬くなっていたので、前後とも少し大きめにイニシャルを抜き、前後を同調させてそこに合わ減衰も抜き差ししました。
セットを大きく変えすぎて少しの失敗もありましたが、それがまた新たな発見となり、セットアップを一段上に押し上げる結果となりました。とは申しましても、これまでと比較して飛び抜けて良くなったというよりも、薄皮一枚破る程度の進化です。しかし、いま私どもが提供しているレベルで薄皮一枚分上に進むのは、なかなか骨の折れる作業です。このCB1300SFではこれまでと同じ枠の中に納めない、必ず上に到達すると決意して取り組んだため、納得できる仕上がりです。
当社のセッティングは金額で分けると一万円、二万円、それ以上となっています。その仕上がりは「大きな枠で見るとでまとまっている」、「大枠の内部を腑分けし、質感の高いバランスを求める」、その上は今回のCBにおいて実現した「緻密に仕上げた車両は、それと解らない程に普通の乗り味に感じる」です。これは今年作業をしたポルシェ911のような「緻密さを極めることが、乗り手に至って普通の良い車だと感じさせ、一つ一つの車の動きが造り手の意図を表す」を理解したことによって発見した領域です。
ポルシェに限らず、二輪、四輪、建築物、全ての物は見識のある造り手による作品であれば、全てに意味を持ちます。あるカーデザイナーは線の一本一本に意味がる、と言っていました。逆に意味の分からない線は考えずに造られた品だと言い切れます。そのため、バイクの造り、乗り味においてもその真意を問われた際に返事を出来なければ、本物ではありません。逆に意味のある造りや乗り味ならば、造り手でない私にも解説できます。これは意味があるから、しっかり伝わり説明が可能なのです。