Monroe モンローのリアショックO/Hが完成

 以前から取り掛かっていたMonroeのリアショックが完成しました。 

塗装も含め全て手を入れました。

 以前のブログで作業に至る経緯を話していますので御覧ください。

 今回は細部を解説します。

 モンローに限りませんが、KONIや古い車両の純正ショック(例えばカワサキのZ1など)はその殆どがツインチューブです。

 ツインチューブとは外から見えるシリンダーの内部にもう一つシリンダーがあり、そこで減衰力を作り出します。

 内筒と外筒の間にある空間でロッドの体積変化を受け止めます。近年のモノチューブはこの体積変化をリザーブタンク等にあるブラダやフリーピストンで対応しています。

 先ずは分解から

溶接部分を切り飛ばす
溶接を切り飛ばす前の状態。

 KONIならネジで締め付けて部品を締結します。KYBのZ1用はカシメ。今回題材としているモンローは溶接で組み立てられています。

 上の写真ではその溶接部分を旋盤で削り、分解を行った直後の写真です。溶接を切り飛ばせば組立作業は不可能となります。

 ですからここからは発想を柔軟にしてアイデア出しが必要となります。

 以前にも溶接型は何度も作業しており、色々な手法が考えられましたが今回はKONI型に改めることでO/Hの回数制限を無くす事としました。そのため額となりますが、安心して継続使用が可能となります。

 仮にロッドが錆びたり中の部品が破損しても、分解して修理が可能だからです。

かなり心を砕いて設計した部品。

 肉厚が薄いので旋盤加工と溶接は難しい面がありましたが、無事に完成しました。

 作り物を組み立てる際には、寸法や組み立て精度が重要となります。図面上では問題なかったのに、仕上がった加工品が上手くはまらない事があります。これは加工精度に問題が有るのか、バリ等のゴミが噛み込んでいるか、または図面で問題が有るかです。

 今回は表面を慣らしてネジの仕上がりを綺麗に整えれば、スルスルと問題なく組み立てられました。一安心です。

ロッドを保持するロッドガイド。

 次に、長持ちさせるためロッドを保持するロッドガイドの加工に進みます。この手の古い部品は焼結材が多く用いられており、加工の耐性が低く脆いのが難点です。それでも形状により問題なく使用可能なこともあるのですが、写真のMonroe純正のロッドガイドは旋盤加工中に脆くも破損しました。

 そこで耐久性を考慮してステインレススティールで作り直しました。

オイルの通路も当然加工が必要です。

 通常はアルミで作ってしまう(その方が加工が簡単)のですが、今回は剛性を重視してステンを選びました。加工時間が少々長くなりますが、肉厚の薄い部分があるため不安要素を払拭したくて、安心して使える鉄系の材料を選択しています。

インナシリンダにつくベースバルブ。

 圧側の減衰力を発生するベースバルブも入念に洗浄を行います。構造上非分解となっており、不要であれば分解はしません。

減衰を発生するといよりも、チェックバルブと考えるほうが正しい部品です。

 旧車は圧側の減衰を最低限しか必要としないため、ベースバルブは近年の製品と違い伸び圧の切り替えに用いるチェックバルブとしての要素が多いと言えます。当該部品は要望があれば減衰発生、更には減衰の仕様変更も行えるように改造が可能です。

朽ち果てる寸前のリバウンドストップ。

 ピストン側に目を移すと、リバウンドストッパの破損が目に付きます。

 この部品はショックが伸び切る際の衝撃を、金属同士がぶつかるに任せず、ゴムやバネで受け止めて衝撃を和らげます。

 モンローに限った話ではありませんが、硬質ゴムを用いてリバウンドストッパとするのはKONIや古いSHOWAも同様ですが、これが数万回どころでは済まない衝撃に晒され、徐々に崩れ細かく砕けます。そうなると細かく砕けた部品がオイル通路を塞ぎ、過減衰を発生させます。

 一度沈ませると数時間、時には半日も沈んだままになる症状はこれが原因です。そこで砕けない部品に置換し、対応します。やや乗り心地は悪化するものの前記の様な事は発生しないため安心して乗り続けられます。

暗くて分かりづらいのですが、砕けた部品を確認出来ます。
洗浄を済ませ組み付けた状態。

 ピストンリングなど交換部品の無いものは極力再使用します。仮に破損状態が酷く再使用出来ない場合には、自作して対応可能です。

ロッドは再メッキを施します。

 サビのあったロッドは再メッキを施します。

溶接を終えたシリンダ。

 完成した部品を組み付けて行きます。シリンダは先行して溶接を終わらせておきました。

塗装前にショックを組み立てる。

 ショックは塗装前に組み立てを行います。

 完成後に問題が発生して追加工があると、再塗装となるためそれを防ぐためです。また、組立時に工具があたり塗膜を傷めることもあるため、それらの可能性を除外したいからです。

 この状態でダンパーをストロークさせて、問題が無いかを確認します。オイル粘度は以前の作業で把握していましたが、それでも何かしらの違いから作動におかしな部分が発生していないか、入念に確認を行います。

 そして数日オイル漏れ確認のため放置して、問題がなけれ塗装へ出荷します。

組み立てを終えたショック。
新品に肉薄する仕上がりです。

 一昨年からお付き合いをする塗装業者さんが良い仕事をしてくれました。ボディーの塗膜を薄くしてモンローの文字が確認できるようにして欲しいと依頼したのですが、見事な仕上がりです。

なんとなくMONROEの文字が誇らしげに見えます。

 というわけで無事に完成したリアショック。オイル漏れ確認は済ませているため、組み付けて即日お客様へ向けて発送しました。

 今回はモンローで初の完全レストアであり、時間も6ヶ月頂いたため少々割引をしていますが、定価では30万円程となりました。

 リアショック1セットとしてはかなり高額な部類ではありますが、O/H不可のMONOREを再生するだけでなく、回数制限のないO/Hを可能にしている点では金額に見合った内容だと自負しています。

 追加の項目が有るとすれば、前述のピストンリングの制作やベースバルブの制作でしょうか。この辺りは最初から全てを行うと金額が更に高くなりますので、おいおい進めてゆけば良いと思います。

 モンローのリアショックO/Hで困った際は是非とも相談して下さい。時間は要しますが再使用可能に出来ます。

 

Share your thoughts