QJ-1の摩耗したシリンダー
今回のお題はQJ-1です。
同ショックは、クアンタムの日本におけるサービスセンター出身の方が立ち上げたダンパーであり、その構造は酷似しています。
QJ-1で私が問題としている点は以下の通りです。
・シムの材質が悪く、性能劣化が早い
・アルミシリンダーで、アルマイトの剥がれが早い
・無理な設計があり、シリンダーとシリンダーヘッドの接合部分Oリングが傷む
これらが大きな課題です。解消すべく対応しました。
シムの置換
上に写っているのが純正のシムです。動きにしなやかさがなく、パリパリした印象です。靭性が低く繰り返しの応力が働くシム(リーフスプリング)としては問題です。
そこで大きさや厚みはそのままに、シムを大手メーカー製へ交換します。
シリンダーの摩耗について
当ブログはクアンタムを題材とし、アルミシリンダーの問題を解説していますが、QJ-1も同様の課題を抱えています。
一流メーカーのアルミシリンダーはその耐久性に問題はありません。それどころか鉄系でコーティングを施していない場合と比較して、格段に動きが良くなります。他方、クアンタムやQJ-1のような材質に対する要求が低いメーカーでは、すぐにコーティングが剥がれ母材のアルミが削れ出します。
これは小規模メーカーの性なのか、メーカーOEMなどの厳しい基準に晒されていない事に加え、レーシングショックという特性で、O/H時には交換前提なのかと推察します。
写真の個体は初期のアルマイト摩耗が発生し、母材を削り始める直前ぐらいだったので予算も踏まえて再アルマイトとなりました。再アルマイトは寸法変化が大きめなので、基本的には推奨しておりませんが、背に腹はかえられぬという事情もあります。
再アルマイトにより、内壁が綺麗に整っているのが確認できます。
シリンダーヘッドとOリング
シリンダーヘッドの接合部分は、軸方向(縦)と円周方向(横)ともに肉厚がないため、小さなOリングを無理に引っ張るため、分解組み立て時の信頼が置けません。その証左としてOリングが捩れ、分解時はかなりの確率で切れます。
ここは再利用はしませんが、可能性はできるだけ排除しておきたいもの。そこで旋盤加工により寸法に余裕をつくり少し大きめのOリングを使えるように改造しています。
シンダーヘッド内にはフリーピストンがあります。
という事で重要な変更点を列挙しました。ここまで来ればあとは組み上げるだけです。ただし構造上、エア抜きは機械で行えず手抜きとなりました。これについても予算次第で改造や変更は可能であり、QJ-1を突き詰めたい方は一度相談してください。