VTR1000R SP2の前後ショック完成

 無事に前後ショックが完成しましたので、その詳細を書き記そうと思います。

 依頼内容は前後ショックのO/Hとフロントのバネ交換。このバネ交換は以前から勧めていた内容であり、2年弱走り込んでその意義を感じとったお客様が納得しての作業です。

見た目はあまり違いを感じないSP1とSP2は、かなり違っているそうです。

 フロントフォーク
 純正状態のフロントフォークはスプリングカラーが寸足らずなために、イニシャルが0どころかマイナス(フロントフォークを引っ張り切ると23mm隙間が生まれる)です。前回の依頼時にはカラーを作って適度なイニシャルを掛けられるように作り直しました。

 そうすると純正フォークスプリングの硬さを適切に判断できるため、お客様は乗り込んでその硬さを十分に体感した次第です。

 バネはオーリンズの09.5Kgf/mmを選択しました。今回、ZX-12R用を使いましたが、そのままではやはり尺が足りないので、バネだけ交換してフロントフォークの動きは改善しないので、注意してください。当社でもバネ、カラーともに制作して販売可能です。

違う車種用に作ったカラーですが、この様な寸法変換が必要です。

 リアショック
 リアショックはFGのFFX.Tと呼ばれる最新型の機構を採用しています。SHOWAのBF機構と同じ仕組みです。一般的なツインチューブ構造(TTx)よりも省スペース化が可能です。

伸び、圧、イニシャル、自由長の全てが変更可能。

 当初はこの仕組を疑っていた私も、実際に改造したり使ってみるとその良さを体感しました。FGのみならずSHOWAのBF機構もサーキットで十分仕事をこなします。

 話はそれますが、SHOWAはアフターマーケットやレース用にBF機構を販売していないために、消耗品や改造部品が販売されておらず、かなり大金を積んだ企業系とそのサテライトチームしか勝てる品を使えないのが、少々残念に思います。

 本題に戻りますがO/Hの際にダイアル段数で現状の問題点を把握し、バネ交換が必要と判断したのでレートを落としました。以前は10Kを用いていましたが、これはやや重ったるいどっしりした動きになり、機敏性に劣ります。そこで9Kを採用し(オーリンズも9Kを使う)動きに軽やかさを演出しました。

小規模メーカーは削り出しの方が低コストの場合もあります。

 果たして、変更が功を奏して狙った通りの動きを実現できました。

 実走セッティング
 走り出す前に先ずはベースセットを確認します。

フロントフォークの調整。
リアショックも基本特性を確認。

 前後ともにバネ定数を落とし(柔らかく)たのですが、下げ幅はリアの方が大きいため、イニシャルで補正しつつ車高調整も用いてリアを持ち上げました。

 ここから走り出します。
 ブレーキを握るとリアの低さがまだ気になります。旋回時に前が高く、内向性が素直に高まりません。そこでリアの車高調整を使って少し(リアショックで0.625mm)上げて、それらを解消できました。

 そうすると相対的にフロントが下がります。前に重みがかかっているので減速時のフロントフォークの沈下速度(ストロークスピード)が速すぎると感じます。今度は圧減衰を3段強め、解消できました。

 概ねまとまったのですが、減速でリアの荷重が抜ける速度がやや早いので、伸び減衰を2段強めて穏やかな特性にします。この変更でいわゆる安定志向になりました。

車高調整は使ってこそ有意義です。

 これでやっと良いまとまりを作り出せました。詰めに詰めて、更にセッティングを重ねることも出来ますが、そうすると幅のないツンツンした方向に向かいやすいので、ここで終わりとしました。

 セッティングは詰めれば良くなりますが、ピッタリと合わせ込めば、それはそれで窮屈な方向に向かいやすいため、何事も過ぎないのが大切だと思います。

タンクの幅は直列4気筒並の幅を持っています。
位置を自由に調整できるハンドルは価値が高いので、採用してみると面白いでしょう。
フロントフォークはフルストロークすると、ダストシールとブラケットが接触する寸前まで動きます。

 今回はここまでです。

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