雑文
今年手がけたBMWの523iF10を思い出していました。
ホイールベース2970mmはかなり大柄に感じました。しかし思いの外曲がる感触はあります。
Mスポーツの車両でしたが、一番気になったのは伸び減衰の不足です。ギャップや路面のうねりで沈んだ車体(ショック)がスッと落ち着くのではなく、ポーンと弾かれるような落ち着きのない動きです。直進時においても路面とタイアは離れそうな、安心感を得られない車体です。
タイアの接地感を得るには、常に路面へ荷重をかけ続ければ良いのですが、そうは問屋(路面状況)が許さずに、サスペンションは常に上下動を繰り返します。
サスペンションが沈み切り伸び始めた瞬間が、その時与えた入力の最大荷重となり、伸び切った時が最小荷重となります。伸び減衰が弱いと、折角沈んで掛けた荷重が素早く抜けてしまいます。そこで減衰を適度にかけることで、ゆったりと穏やかに荷重を残してストローク頂点まで動いてゆきます。そのため最小荷重となるポイントでも急にぬけず緩やかに安定しています。
この辺りの作りが上手いのは、ポルシェとベンツです。どの速度域でも適度に入れ(サスペンションを縮め)、適度の抜いてゆく(伸ばす)。これが歩くような速度から300km/hまで可能であれば、非常に素晴らしし車体という事になります。ルノー・ルーテシアも安価に作った車体の中に、抑えるべきポイントをキッチリついて、良い仕上がりでした。
この車体を路面に押し付ける力はどこから生まれてくるのか?一番大きな要素は車重です。つまり車重の思い車(バイクも)は操作をせずとも自重によりタイアへ荷重が強くかかり、接地感の高い安定したハンドリングを比較的簡便に実現できます。ダウンフォースは街を走る車にはほぼ無縁なので、ここでは論じませんし、論じる能力も持ち合わせていません。
重い車重はブレーキ性能を常に試す事になりますし、エンジンも同様に負担が大きくなるため、大きなトルクを必要とします。
エンジンといえばバイク程では無いにしろ、四輪においてもエンジンの形状と重さは、その車両を決める程の大きな要素となります。最近のダウンサイジングターボは、排気量を抑える効果がある反面、エンジン重量も小さくなるためその存在感は薄くなります。
車重が重くなればなるほど、エンジンの重量比は小さくなります。エンジンが車両中央によっても似たような効果が出ます。車両重心に重量物がよってゆくとその重みを感じ取りづらいと私は感じます。
BMWはエンジンを後ろに持ってゆき、とにかく静止状態の重量比を前後50/50にしよう心がけています。バイク乗りの私はそれに若干の違和を感じます。いま乗っているメルセデスのE350はV6でその車両の中心はダッシュボードとバルクヘッドの辺りと感じ取れます。
BMWはそれがもう少し後ろのシフトノブ辺りにだと思います。そのため軽快感は強いのですが、フロントタイアの接地力を出すにはしっかりした荷重移動、つまりはエンジンブレーキやフットブレーキを必要とします。上級者はスリリングな楽しみを覚えるはずです。
反面、一般的なドライバーはATと合わさった前後荷重移動の少ない運転が常です。そうであるならば前輪に荷重をかけるのは難しく、安心感を得難い車体と表せます。メルセデスはそれを踏まえ、少し前方寄りの重量配分なのだと考えます。
バイクも大抵の場合でフロント荷重の方が大きい乗り物です。しかもホイールベースが短いのに重心は高い位置にあり、荷重変化を起こしやすい作りなので、減速でフロントタイアからグッと接地感を得られ加速ではリアに大きく荷重が移動し、こちらもまた良い接地感を得られます。
それに反して四輪は(FRの場合)リアのアンチスクワットに加え、ピッチングでどれ程の荷重がリアに映るのかはわかりませんが、E350は意外なほどリアタイアの食いつきを強く感じます。長めのリアオーバーハングの影響でしょうか?
F10の2970mmのホイールベースに対しW211は2855mmです。しかし全長は20~30mmしか変わりません。ほぼ同じ全長の中でホイールベースだけ100mm近く後退した事になります。この差は大きいです。エンジン位置が変わらなければホイールベースを伸ばすと前輪荷重は増えますので、BMWはそれを狙ったのでしょうか。しかしF10もその後のG20もその重心は車両中央近くです。
前述の重量配分はもう少し車両を乗り込み、分析が必要そうです。
特に目的を持って書き出したブログではありませんが、まとめるとサスペンションだけをみるのではなく、その構成を知りセッティングするのが大切だと考え、事にあたっております。