KissレーシングのFG破損
前回の全日本で優勝したKissレーシングのYZF-R25に使用するFGが、修理のため帰って来ました。
FGでは設定のないアルミシリンダーを用いた特別仕様です。今回修理となった理由は、練習走行時の転倒から動きに違和感があると乗り手が訴えたためです。
車両についた状態での動作確認では、その問題を感じなかったそうです。届いたダンパーを確認して原因を発見しました。車高調整のエンドアイが不自然に見えます。詳細に観察するとネジ山が削れていました。そこで推論を立てました。
レース車両は車高の変更を俊敏に行うため、これまでの使用によりネジ山が痩せていた。変更を俊敏に行うが故にロックナットは軽く締める程度で、その状態で転倒し強引に引っ張られたエンドアイがネジを飛ばしたため、しっかりと固定されなくなったエンドアイとベース部分のガタが、一瞬の減衰抜けに感じられたと思います。
分解時の写真からは、シールヘッドを抜いた後の泡立ちもなく、ピストンを抜いてすら少々の泡しか確認できませんでした。これでエア抜きがしっかり出来た証拠です。
ですが安易に原因を特定するのは次の問題を起こす可能性があるため、ダンパー本体も分解し細かく確認しました。急な力が加わるとシリンダーが変形する事もあるので、特に内壁は入念に調べます。そのほか、ロッドやリザーブタンク、シムなどもその対象です。
JSBやST600で使われるあるメーカーのシムは、ハイサイドや路面の段差などストロークスピードが想定以上に速いと、シムが変形し孔を塞げなくなり狙った動きをしなくなります。今回はシムには問題がありませんでしたので、そのまま再使用します。
来年も同じダンパーを使う場合は、シム交換も必要となりそうです。シムは簡単に言えば板バネですから、過酷な使用でへたります。過酷とは大きくたわむ、長い時間使うなどの意味です。
オイル交換を行い、上下のピロボールを交換して出荷となります。