クローズドカートリッジの考察と宣伝
今回はフロントフォーク丸ごとの交換ではなく、内部のカートリッジのみを変更する場合を考えてみます。
旧来の一般的なカートリッジは潤滑や油面を決めるオイルと、減衰力を発生するオイルが混然一体となり使用するので、バネのこすれた汚れやスライドメタルの汚れ、オイルシールの削れたカスがカートリッジ(減衰機構)に入り、ピストンやシムに挟まったりするなど問題を起こします。泡消性も悪くなり、フロントサスペンションシステム全体として機能が低下します。
その問題点を解消しするために、2000年代に入りレースで主流になったのが、クローズドカートリッジです。これは今までのオープンカートリッジのオイル経路と、ロッド体積変化を受け止める機能をカートリッジ内部に納めシステムを外部と遮断する事から、クローズドの名がついています。
エンジンに例えればエンジンとギアの潤滑を分離し、エンジンは潤滑を主にし、ギアは対剪断製を優先し、それぞれの目的に応じた品を使えるので、性能をより引き出せます。
フォークカートリッジは閉じる事で外部からの汚れを断ち、更には閉鎖空間から空気を引き抜き、オイルを充満させればキャビテーションに対し絶大な効果を発揮する上に、最初の段階で気泡がないのでエアレーションは非常に起こりづらくなるので、減衰機能をより安定させられます。特に現代のダンパーはタイアや車両の進化に応じる為、減衰が強くなっているので問題が顕著になるので、その解決策としてクローズドカートリッジは非常に有益だと考えています。
問題はメンテナンス性を犠牲にする点です。サスペンションやダンパーに精通し、工具と知識のある工場でなければ、作業に手が出せません。実際、先日1199パニガーレのフロントフォークがおかしいとの依頼で分解した、ザックスのクローズドカートリッジは、オイルが不足し気体が存在し、間違った組みつけにより不圧になっていた品を作業したのですが、非常に危ない状態で、バイクとして成立していませんでした。
価格面でも専門性がより高まる事で、販売価格と整備費用も高額にならざるをえません。
上記の点を踏まえ、FGのクローズドカートリッジ「Pressione Zero」は市販している非加圧式(ガス圧の掛かっていない)のなかでは最高の性能を有していると、断言します(といっても私見ですが)。
ステアリングダンパーの機構をご存知の方には理解が早いと思いますが、一方が動けば反対側にシャフトが突き出てくるので、内部の容積変化を起こさないのが、スルーロッド(ステダン式)の利点です。FGのプレッスィオーネ・ゼロもスルーロッドを採用しています。容積変化が無いので微妙な動きにも追従し、チャタリングに対し大きな効果を発揮します。もちろんトップアウトスプリングを備えています。
回路が閉じているので、前述のキャビテーション対策にもつながります。ガスで圧力をかけていないので、オイルシールのリップを締めるける力も弱く、フリクションの面でも利点があります。ただ圧をかけないのでプレッシャライズドカートリッジ(加圧式)と比較してキャビ、エアレーションに対し若干弱いのも事実ですが、オープンカートリッジとは比較にならないほど、高機能です。
さらにPressione Zeroの利点は倒立式に限りますが、トップキャップに全ての機構が集約して有る点でもあります。伸び(テンション又はリバウンド)、圧(コンプレッション)、イニシャル(プリロード)車高調整(突き出しに相当)の全てをバイクにまたがった状態で行えますので、レースでセッティング変更に取られる時間を最小限に留められるのです。
価格は税抜き¥238,000と、機能からすれば非常に安く設定してあります。もちろん絶対値としてはかなり高額なのですが、このトップキャップは見た目にも訴求力があるのではないでしょうか。スプリングも希望にあわせ変更可能です。
加圧式(プレッシャライズド方式)を希望の方には、オーリンズのFGRシリーズを提案いたします。こちらはFGと比較し、システムがより複雑になるので更に高額な¥288,000ですが、FG、OHLINS共にバイクをより面白くする製品です。