MVアグスタ【Superveloce】の前後Bituboを仕様変更

 以前、リアショックを交換しフロントはスプリング交換で作業依頼をいただいたお客様が、今回は前後Bituboを取り付けたので、セッティングをして欲しいとお越しになりました。

 実はセッティングでは解決できないと判断し、車両を預かりフロントフォークを分解。仕様変更を行いました。

 なぜ外部調整だけではセッティングできないと判断したのか?その理由はストローク後半の動きが硬く、ダイアル関連では解決できなかったからです。

 予想ではスプリングレートが高い、または油面設定が高い。この二点に原因があると読んだわけですが実際はどうだったのでしょうか。

 実は両者とも適正な値で、問題は圧(縮)側減衰でした。これがかなり過剰で、車格が一つ上のS1000RRと同じスプリングレート、減衰設定でした。

 特に減衰に関してはS1000RRでもダイアル最弱でギリギリ動くかな?といった感じでしたから重量が軽く、直列四気筒と三気筒とエンジン形式も違い、さらに車速が伸びづらい事もあり硬いと感じたのでしょう。 

 Bituboのカートリッジキットはガス封入型です。そのため分解調整は特殊工具が必要となります。すでに工具はもているため、難なく作業を終えました。

 実際の作業内容は、圧減衰のシム組を変更するだけですが、それをどの程度に納めるのかが難題です。過去の経験から大幅に抜きましたが、感覚値としては40%といったところです。

 スプリングは実測して硬さを確認し油面はほぼそのままにしました。これで試乗を開始したわけですが、動きはしっかりと出るようになっています。

 しかしダイアル全て最弱では何かチグハグです。そこで、一番不快に感じたリアショックのイニシャルを抜きます。そうすると動きが出て不快な衝撃が大幅に緩和し快適になりました。

 次に動き過ぎるフロントに着目します。伸び減衰から強めてお釣りを抑えます。そしてイニシャルを増してゆき、動きの量を抑えつつ高さを変更。

 最後に圧減衰を適量増して、しっとりとした感触に仕上がりました。それでも若干の違和を感じ、フロントのイニシャルを1mm増して落ち着いたという次第です。

 これにより減速から加速までしっとり柔らかく、しかしバタバタと動きすぎない上質な印象に仕上げました。フロントイニシャルを追加した理由は旋回時の車高がややリア上がりだったので、それを補正するためです。

 実車の動きをみたお客様も動きの違いに喜んでくださいました。納車翌日にツーリングへでかけ高速道路のつなぎ目、旋回性の大幅な改善と結果として若干足つき性が改善した点を評価してもらえました。

 今回の仕様変更は概ね6万円です。この経験をもとに、次回の仕様変更ではさらにきめ細やかな仕上げが出来そうです。リアに関しても分解するならば減衰設定を変更することで、さらに動きの良さをだせるため、O/Hの際には試してみようと思います。

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